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樹木調査隊

樹木Q&A・健康チェック

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No.11

捨てられても希望は捨てない
 
 伐採されて、切り株を掘って畑の傍らに捨てられていたのですが、切り株から沢山の葉を出しています。葉を見るとクスノキでした。
クスノキはとても不思議な木です。普通、木は若い苗木のときほど移植が容易で、大きな木になると移植が難しいのですが、クスノキは若木のほうが移植が難しく、大きな木になると移植しやすくなります。
 昔、樟脳を作るためにクスノキを植林したときは、若木の茎を切り捨て、根株だけを移植しました。そんな芸当ができるのはクスノキが強力な殺菌・殺虫能力を持っているからです。普通の木は、大木になって移植をされると、枝の切り口や根の切り口から病原菌が入って、枝や幹の樹皮が死んで枯れてしまうか、枯れなくても、そこから腐朽が入って樹勢が著しく衰退します。ところがクスノキは、樟脳成分を多量に含んでいて、傷口から入ろうとする病害虫を防ぎます。そのため移植によって体が弱ってもあまり胴枯病にかかりません。また、幹や太根から新たに芽や根(不定根)を出す能力も高い状態が維持されます。ですからクスノキは、樹皮のコルク層が発達して幹表面からの蒸散が抑制されるようになると、移植が可能となるのです。
 写真の木は切り株を掘り出されて捨てられても病虫害の侵入を防ぎ、残されたエネルギーで発芽しています。生きる希望を捨てないで、たくましく生きようとしています。 (苗)
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