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Q10.菌根菌について、教えてください。
本校で、ヤマボウシとギンモクセイの根系調査をしていますが、この2つに共生関係である菌(グループ)を教えて頂きたいのですが宜しくお願いします。
また、このような内容が記載されている本がありましたら紹介をして頂きたいのですが宜しくお願いします。
A10.ヤマボウシもギンモクセイもどちらも内菌根を作るようです.
熊本大学の前田氏(1954)が根の切片をつくり,これらの根の細胞内に菌が侵入し内菌根を作っている事を観察しています(文献名は以下:註1).
しかし,菌の種類は不明です.当時は確かめる方法がなかったわけです.現在は菌の遺伝子を調べ,種類を同定する事が出来ると思いますが,だれもまだ菌の種類に関しては研究していないようです.ちなみに菌根の文献データベースにもあたってみましたが,文献は出てきませんでした(註2).

ヤマボウシは日本,朝鮮,中国に分布.ギンモクセイは中国(南西部)からヒマラヤ,インドシナ,日本(九州南部)に自生することが知られています.このように両者ともアジアに固有の植物ですから,自生地のアジアにおける研究が期待されます.

我々が一般にきのこと呼んでいるものの大部分は担子菌類で,担子菌類の一部は樹木に外菌根を作ります(担子菌類の大部分は,枯れた木などから発生する木材腐朽菌や,落ち葉などから発生する落葉分解菌です).しかし,ヤマボウシのようなミズキ科,ギンモクセイのようなモクセイ科は内菌根をつくり,かびの仲間が共生していると言われています.一般には接合菌類が多いと言われていますが,調べてみないと正確な菌類の種類は判りません.ランの仲間はリゾクトニアなどの担子菌が根の細胞内に侵入し,内菌根を作ると言われています.最近は遺伝子を用いた研究が進み,ランの菌根菌はかなり判ってきたようです.

文献
註1.
Masayuki Maeda:
The meaning of mycorrhiza in regard to systematic botany.
Kumamoto Journal of Science. Ser.B No.3, p.57-84 (1954)

註2.
Mycological Literature Database(菌学文献データベース)
http://mgd.nacse.org/cgi-bin/qml2.0/fslmyco/mycolit.qml

菌類学に関する文献のデータベースですが,菌根に関する文献もほぼ完璧に集められています.無料で公開されていますから,インターネットを用いて誰でも利用できます.

菌根の解説としては:
http://cse.ffpri.affric.go.jp/akema/public/mycorrhiza/mycorrhiza.html
明間民央さんのホームページ:菌根とは が判りやすいと思います.

日本語の菌根に関する本は,あまりたくさんはありませんが,明間さんのホームページに紹介されています.外国の教科書は以下の2書がよく利用されています.

Harley,J.L.: The Biology of Mycorrhiza. 2nd ed. Leonald Hill, London (1969) Smith,S.E. anf D.J.Read: Mycorrhizal Symbiosis. 2nd ed. Academic Press. (1997)

以上,ヤマボウシもギンモクセイも,まだほとんど菌根に関しては研究されていないので,これから研究されると,いろいろ新しい発見が出てくると思います.(横山和正)
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